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録音は1998年11月と1999年5月にWongの家の一室で録音したものと、同5月の「なかのゼロホール」でのコンサートでのライブ録音。 |
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ピアノはWong氏宅のベーゼンドルファー、ゼロホールではヤマハだが、どちらも見分けがつかないほど、録音は非常に良いものになっている。 |
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WIM We In Music < 試 聴 > Wongホームページより |
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1. Peace People / Wong |
2. Waltz For Vana / Mori |
3. Only A Step / Wong |
4. It's Never Too Late to Meet Again / Wong |
5. Just Like Blues / WIM |
6. Rain City / Wong |
7. Unknown Children / Wong |
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Produce & Performed by |
WIM |
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Piano |
Wong Wing Tsan |
Drums |
Yasushi Ichihara |
Bass |
Yasuhito Mori |
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Engineer |
Takuya Mori |
Piano Technician |
Kohki Nakamura |
Recording Assistant |
Mineshi Wong |
Photographer |
Hitoshi Iwakiri |
Photographer's Assistant |
Kentaro Normal |
Jacket Art & Design |
Mieko Wong |
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【やり残してきた仕事】 |
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今から30年ほど前、江夏健二と名乗るジャズ・ビアニスとがいた。自らのトリオを率いて、都内のライブハウスを中心に活動を続け、70年代の半ばには、LP片面分の録音を発表したものの、その後は忽然とジャズ界から姿を消している。 |
それからずいぶん時間が経過し、スウェーデンに長年住み、北欧を代表するジャズ・ベーシストとなった森泰人が、自己のグループ「ウィンデュオ」で帰国した。そのころ、ウィンデュオは、ウォン・ウィン・ツァンと名乗るピアニストと共演したディスクを発表し、まもなく帰国した森と再共演したウォンの演奏を聴く機会を得た。頭のなかで「ウォン・ウィン・ツァン= 江夏健二」と一致したのは、そのときが初めてだった。 |
若干19歳という若さでプロ・デビューを果たしたウォンは、当初ジャズの世界に足を踏み入れるが、まもなく挫折。その後スタジオ・ミュージシャンを経て、ニューエイジ〜ヒーリングと呼ばれる分野で成功を収め、現在ではテレビ・ドキュメンタリーの音楽を手がけるまでに至っている。そのウォンが98年になって、トリオ時代のメンバー2人に「音楽をやらないか」と声をかけた。自分の音楽をずっと独力で作り上げてきたウォンが、かっての仲間と、いっしょにジャズを演りたいという。ソロ・ピアノの世界で自己のスタイルを完成させたWongだけに、きっといいものができるという確信が最初からあったが、本人はジャズに相当な劣等感があるのか、どうも自信が無いという。 |
この作品が名盤か否か。その結果はみなさんがお聴きになっての通りである。 |
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グループ名のWIMとは、ウォン、市原、森のそれぞれの頭文字のイニシャルを合わせたものだが、もう一つ「We In Music」の略でもある。音楽のなかでもジャズという言語を通じて、同じ世界を共有しながら、自由な会話を繰り広げている3人のアーティスト。まさに今回、このトリオに賭けた狙いを象徴するかのようなグループ名だ。 |
なかでもジェフ・ベックの名曲にインスパイアされて書いたというバラードの「It's Never Too Late to Meet Again」は、今回「やり残してきた仕事」に取り組んだウォンの、偽らざる現在の心情ではなかろうか。ラストの「知られざる子供たち」は、ウォンの既発アルバム「香港人形」に収録されていた名曲。テレビのドキュメンタリー番組で、アフリカのストリート・チルドレンたちの悲惨な状況を見せつけられ、心痛めたウォンが、彼らに捧げて書いた珠玉の逸品である。ウォンはこのアルバムに収録するつもりはなかった楽曲だが、森と市原が強く推した。聴いているうちに、訳もなく涙が頬を伝っていった。 |
1996年の1月、久しぶりに帰国した森泰人のコンサートで、かって江夏健二と名乗ったジャズ・ピアニストに出会わなければ、私はウォン・ウィン・ツァンというアーティストに、これほどまでに関心や期待、共感を覚えなかったに違いない。長い時間がかかったけれど、ジャズの世界に戻ってきたウォン・ウィン・ツァン、そして森泰人、今や日本のジャズ界を代表するベテラン・ドラマーとなった市原康の3人に、感謝の意を表し、彼らのこの再デビュー・アルバムの発表を心から歓迎したい。 |
99.7.16 |
後藤 誠 (ジャズ評論家) |
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