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スイングジャーナル誌 2004.8月号

記事のご紹介

  


 

 

 

p.219 What's up now ! / SJホット・インタビューより
インタビュー・文 杉田宏樹

 Yasushi Ichihara 
市原康(ドラムス)

ぼくの観点が "サポーター" にあるので、
ピアニストが解放されれば100%成功だと思う

 

  スタジオ/セッションみゆとして4ビートからフュージョンまで、幅広い活動を行っているベテラン・ドラマー、市原康は、どちらかといえばバイ・プレイヤー・タイプの名手。そんな市原がプロデュースを務める新しいプロジェクトが立ち上がった。その名も「i-produce」。これは市原が実質的なリーダーである初めてのユニットTRIO'のデビュー・アルバム『ワット・アー・ユー・ドゥーイング・ザ・レスト・オブ・ユア・ライフ』のレコーディングにおいて、サウンド・プロデューサーを一般公開するという異例の制作スタイルが取られたことと連動している。
 「僕が出演する芝居の公演日が1日開くことになったので、その日にかねてからまとまった形でやりたかったトリオを実現させた。ピアニストを決めるためにひとりの観客の眼で福田重男のライブを見て、この男だと確信し、声をかけた。ベースはぼくが20代からの知り合いで、ウォン・ウィン・ツァンとのWIMでもアルバムを出している森泰人に決めていた。観客に対する制限を設けず、距離感のないライブが出来たらと思ったのが発端。40数名もの応募者があって、その中から2名を選んだ」。
 レコーディングが行われたのは、市原出演の芝居の舞台装置がそのままセッティングされたお台場のホテル日航東京「マグレブ」。市原と福田は東京で連絡が取れて、共同作業でアレンジを固められるとして、スウェーデンを拠点とする森とは、事前のコミュニケーションを図ることには自ずと制約があった。しかも森と福田はこのときのレコーディングが初共演。にもかかわらず市原には「初対面の良さ」が作品に反映される確信があったという。この3人でなければ生み出せないトリオ・サウンドのリーダーである自負が、TRIO'というユニット名に結実した。
 「3人の音の交わりから出来る世界の可能性に関して、このトリオ独自のものが表現されていると思う。ぼくの観点が "サポーター" にあるので、ピアニスト福田の解放された姿を提示できれば、100%成功だと思っていた。
 「ドラマーがリーダーになるべきではない」が持論だった市原が、音楽生活30年超で初めてリーダー&プロデューサーを担うこととなり、見事にその重責を果たした。予期せぬところから、J-ジャズ・トリオ界に一石を投じたアルバムといえよう。

 

 

p.143  7月新譜紹介より
「優秀+おまけ」マーク

「日本人の足下には宝石がころがっているのである」

 文・中山智広

 ドラマーの市原康がプロデュースするピアの・トリオの初作品。1月に公開録音を行い、トラック・ダウンをするミキサーは公募。しかもトリオのメンバーは、このときが初顔合わせだったらしい。非常にジャズらしい状況の中で、演奏は程よい緊張感と、細やかな心遣いが感じられるものになった。市原はスタジオの仕事のキャリアが長いが、この作品ではアナログ的かつヒューマンなドラミングで、暖かいサウンドを作っている。福田重男はモーダルな感覚を持ったピアニスト。クールかつ知的なサウンドで、熱くスイングするというバランスの良さが魅力。ピアノの響きは非常に美しく、自分のスタイルを確実にもっている。もし日本で今、「欧州系ピアニストがブーム」だとすれば、福田にも注目すべきである。今までもさんざん書いてきたことだが、日本人の足下には宝石がころがっているのである。最近日欧間で大活躍のベーシスト森泰人は、暖かいサウンドと優れた歌心の持ち主で。この人が共演するピアノ・トリオは間違いないと言っていいだろう。トリオの演奏はそれぞれに個性的なテクニシャンが集まってるものの、個々が全体のために貢献する感覚が随所にあって良くまとまっている。また奇を衒ったような演奏は一切ない。ストレートな4ビートでスイングするC、ベースが見事に歌うD、歯切れの良いファンク・ビートが印象的なE等、収められた音楽も多彩で楽しめる。一級品だ。

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制作・i-produce 販売・Spice of Life 

     

 

 

photo by LIKI